火災での重過失による損害賠償発生事例!過去の判例を探してみた!

糸魚川の大規模火災をキッカケに、
火災の火元が負う損害賠償義務を調べてたら、
基本的には出火元に賠償義務は無い、
という意外なルールを知ったんですが、
あくまでコレは通常の原因の場合ということで、
重過失に当たる場合はこの限りではないと・・・・。
で、この重過失ってのが調べてみると、大体の火災原因って重過失じゃん!?
とちょっと恐ろしいことを知ってしまったんですが、
その場合、一体どのくらいの損害賠償額になってしまうのか?
過去の判例から重過失で損害賠償が発生した額を調べてみました!
火災原因で重過失に該当するもの
これ、最初は火災の原因を作ってしまっても大体の場合は、
その出火元となってしまった人に責任を負わせない、ということかと思ったら
案外殆どのものが重過失に該当しちゃうのね。。。
※任意保険では補償してくれるみたいですが。
で、重過失なのかどうかと言うのを過去の事例から1回まとめてみましょう。
重過失と認められた事例
- セルロイドの玩具の販売店員がセルロイド製品が存在する火気厳禁の場所で、吸いかけの煙草を草盆上に放置し、そこへセルロイド製品が落下し、火災になった例(名古屋高裁金沢支部昭和31年10月26日判決)。
- 火鉢で炭火をおこすため、電話機消毒用のメチルアルコールを使用し、火鉢の火気を確認せず、アルコールを火鉢に注ぎ、火災になった例(東京地裁昭和30年2月5日判決) 。
- 電熱器(ニクロム線の露出しているもの) を布団に入れ、こたつとして使用し火災が発生した例(東京地裁昭和37年12月18日判決)。
- 藁が散乱している倉庫内で煙草を吸い、吸い殻を捨てたため、後になって火災が発生した例。
- 強風、異常乾燥で火災警報発令中に建築中の建物の屋根に張ってある杉皮の上で煙草を吸い、そこに吸い殻を捨てたために火災が発生した例(名古屋地裁昭42・8・9判決) 。
- 電力会社が引下配線が垂れ下がっているのを現認したにもかかわらず、これを放置したため、強風のため電線が切れ、家屋の火災が発生した例(大阪高裁昭44・11・27判決) 。
- 石炭ストーブの残火のある灰をダンボール箱に投棄したため発生した火災につき、灰を投棄した者に重過失がある(札幌地裁昭和51年9月30日判決)。
- 電気こんろを点火したまま就寝したところ、ベットからずり落ちた毛布が電気こんろにたれさがり、毛布に引火し火災になった例(札幌地裁昭和53年8月22日判決) 。
- 主婦が台所のガスこんろにてんぷら油の入った鍋をかけ、中火程度にして、台所を離れたため、過熱されたてんぷら油に引火し、火災が発生した例(東京地裁昭和57年3月29日判決)。
- 周囲に建物が建ち、多量のかんな屑が集積放置されている庭において、火災注意報等が発令されているような状況下で焚火をした者に重過失がある(京都地裁昭和58年1月28日判決)。
- 寝たばこの火災の危険性を十分認識しながらほとんど頓着せず、何ら対応策を講じないまま漫然と喫煙を続けて火災を起こした者には重過失がある(東京地方裁判所平成2年10月29日判決) 。
- 点火中の石油ストーブから75cm離れた場所に蓋がしていないガソリンの入ったビンを置き、ビンが倒れて火災が発生した例(東京地方裁判所平成4年2月17日判決)。
- マンション解体工事でアセチレンガス切断機で鉄骨切断中、飛散した溶融塊により発生した火災の例(宇都宮地裁平成5年7月30日判決)。
- 石油ストーブに給油する際、石油ストーブの火を消さずに給油したため、石油ストーブの火がこぼれた石油に着火して火災が発生し、隣接の建物等を焼損したことにつき、重過失があったとして不法行為責任が認められた例(東京高裁平成15年8月27日判決)。
- クリーニング店舗内の作業所の床面・配線等に問題があったにもかかわらず,いずれもその修理を怠り,しかもドライ液の漏出の回収を怠っているから,本件火災の発生につき,被告らに は失火責任法所定の重過失があった(東京地方裁判所平成19年9月14日判決)。
失火(火事)の損害賠償請求裁判 より引用
逆に重過失にならなかった事例
- 工場の煙突から飛散した火の粉による火災。
- さんが古くなって倒れやすくなったふすまが石油ストーブの上に倒れて火災になった例。
- 屋根工事をしていた職人が煙草を火の付いたまま投げ捨てて起こった火災。
- 火を消すために消火用の砂を取りに行った際ガソリン缶を蹴倒して惹起した火事。
- 浴槽の排水口の栓が不完全であったため、水がなくなったが、それを確認せずガスを点火し、空焚き状態から発生した火災。
- ベットからずり落ちた布団にガスストーブの火が点火して発生した火災。
- 仏壇の蝋燭が倒れて失火した場合に蝋燭の点火者及びその家族に重過失がなかったとされた(東京地方裁判所平成7年5月17日判決)
- 電気器具の器具付きコードのプラグと室内の壁面に設置された電気配線のコンセントの接続部分(コネクター)にほこりや湿気がたまることによって生ずるトラッキング現象が出火原因とみられる火災につき、建物の使用者の重過失が否定された・・・トラッキング現象が、火災発生の原因として注目されるようになったのは比較的最近のことであり、本件火災が発生した平成4年8月当時は必ずしも一般に良く知られた事象であったとはいえないことを理由とする(東京高等裁判所平成11年4月14日判決)・・・平成26年現在では、重過失とされる可能性がある。
失火(火事)の損害賠償請求裁判 より引用
大体のが重過失になる!?
見比べてみると、あからさまなのとは別に、ちょっと曖昧な線引がある気がしますよね。
気になったトコを太字にしましたが、
例えば屋根上からタバコを捨てた、という同じような状況でも、
火災警報が出てれば重過失、じゃなければ免責という感じで、
多分その時の時代背景もあるんだとは思いますが、
時代背景と言えば、トラッキング現象も認知される以前は免責になってますが、
おそらく今だと重過失になるんだと思います。
ストーブ類への不慮の引火も重過失とそうじゃない場合があったそうで。
※というか電気コンロに火を付けてってどんな状況だ?
暖を取るためということでしょうかね?
で、定番の天ぷら油は今も昔も重過失のようなんで、
結局のところ一般家庭で生じる火災って全部重過失になるような気がします。
実際に重過失による火災で損害賠償請求が認められた事例
流石にこういった堅い判例はちょっとネット調べただけではすぐに見つからなかったんですが、
唯一1個見つけたんでそれを噛み砕いて紹介します。
こういうのってきっと法律家とかしか持ってない資料とかにしか無いんでしょうね。
あとは図書館とかでしょうかね。
実際の火災例
- 天ぷら揚げてる最中にトイレに行き出火
- 隣の家に燃え移り全焼
で、定番の「天ぷら」なので、重過失になりますが、
ご本人の見解では賠償責任は無いとして、誠意としていくらか支払うつもりだったと。
これ、この重過失というのを知らないと、
そういうもんだと思って泣き寝入りになりそうですよね。
ま、実際には自分の火災保険で、
ある程度補償はしてくれるはずではありますが。
損害賠償請求までの流れ
ちなみに全焼した家屋は築5年で、取得価額は不明。
なので、曖昧な価格例ですが、
この時の請求額が1577万円だったそうです。
ただ、原因が明らかだからすぐにどうにかなる、というわけではなく、
まずは仮差押から入り~~~と裁判を進め、
申し出から解決まで約1年。 ※弁護士的にはこれは早い解決らしいです。
その間の裁判費用が200万円ほど。
で、最終的には和解と言う形で示談金600万円で解決したとのこと。
※上記事例は失火(火事)の損害賠償請求裁判 より噛み砕いて抜粋。
火の用心に越したことは無いけど火災保険の確認も大事っぽい
と、火災自体も恐ろしいんですが、その後のことも考えるとさらに恐ろしいです。
近所の家は数年前に火事起こしたけど、
その後保険で建て直してニコニコしてましたが、
あれってきっと任意保険とか入ってたからということですよね。
確かタバコが原因だったはずなんで重過失ですもん。
当然、火災を起こさない事が大事ですが、
万一も事を考えて、ちゃんと火災保険がどうなってるのか把握しなきゃと思いますね。
自分を守るというと言い方悪いですが、
万一の時に近隣の人助けてあげらんないんじゃ、ちょっとあんまりなので><
※任意保険によっては重過失時の近隣への補償もついてたりするそうです。